2010年10月11日
昼夜が分からなくなって
目が見えなくなっておよそ1週間。
おじいちゃんは
だんだんと昼と夜がわからなくなってきていた。
私は
黒い布で自分の目を覆ってみた。
ああ、これは
毎日、毎日が夜だ。
おじいちゃんは、これよかもっと黒い、真っ暗な世界にいるのだ。
朝になったよ
夜ご飯だよ・・・
家族に言われることでしか昼夜の区別がつかない。
目ばかりでなく
もしかしたら脳にも異常が・・・と
ふと心配になっていたりもした。
おしっこがしたいのに
母に遠慮して言えないおじいちゃん。
おじいちゃんの部屋にある縁側で
おしっこをしていた形跡があったという。
おじいちゃん
もう、遠慮なんかしないで!
みんなに甘えて!
私は
涙をこらえながら
おじいちゃんの耳元で叫んだ。
おじいちゃんは
だんだんと昼と夜がわからなくなってきていた。
私は
黒い布で自分の目を覆ってみた。
ああ、これは
毎日、毎日が夜だ。
おじいちゃんは、これよかもっと黒い、真っ暗な世界にいるのだ。
朝になったよ
夜ご飯だよ・・・
家族に言われることでしか昼夜の区別がつかない。
目ばかりでなく
もしかしたら脳にも異常が・・・と
ふと心配になっていたりもした。
おしっこがしたいのに
母に遠慮して言えないおじいちゃん。
おじいちゃんの部屋にある縁側で
おしっこをしていた形跡があったという。
おじいちゃん
もう、遠慮なんかしないで!
みんなに甘えて!
私は
涙をこらえながら
おじいちゃんの耳元で叫んだ。
2010年07月31日
失明は、心にも
突然、目が見えなくなってしまったことで
おじいちゃんは心のバランスも崩したようだ。
おじいちゃんは
とても記憶力がよい人で、頭はすごくしっかりしていた。
物忘れのひどい父は
俺よりジイの方がよほどしっかりしている、と言っていたほどだ。
そんなおじいちゃんだったが
目が見えなくなってしまうと、何回も同じことを聞いてきた。
こんなことは、あまりなかったことだと母は言っていた。
失明したとはいえ、
認知症になったわけではないのだから、自分の部屋の間取りぐらいは
覚えていそうなのに・・・・
祖父の部屋の前にトイレがあるのだけれど
それさえもわからなくなってきている・・・と父は嘆いた。
たぶん、心がパニックになっているのよ・・・
不安で不安で仕方がないのよ・・・と母。
これからは
家族みんながおじいちゃんの目になろう!
ご飯もお風呂もトイレも、みんなで助け合おう!
うん、お母さんもタイヘンだから
私も週末には手伝いに来る!
みんなで助け合うことを確認した一日だった。
おじいちゃんは心のバランスも崩したようだ。
おじいちゃんは
とても記憶力がよい人で、頭はすごくしっかりしていた。
物忘れのひどい父は
俺よりジイの方がよほどしっかりしている、と言っていたほどだ。
そんなおじいちゃんだったが
目が見えなくなってしまうと、何回も同じことを聞いてきた。
こんなことは、あまりなかったことだと母は言っていた。
失明したとはいえ、
認知症になったわけではないのだから、自分の部屋の間取りぐらいは
覚えていそうなのに・・・・
祖父の部屋の前にトイレがあるのだけれど
それさえもわからなくなってきている・・・と父は嘆いた。
たぶん、心がパニックになっているのよ・・・
不安で不安で仕方がないのよ・・・と母。
これからは
家族みんながおじいちゃんの目になろう!
ご飯もお風呂もトイレも、みんなで助け合おう!
うん、お母さんもタイヘンだから
私も週末には手伝いに来る!
みんなで助け合うことを確認した一日だった。
2010年06月19日
目が見えない、ということ
突然、目が見えなくなる!
さっきまで見えていたものが見えなくなる!
こんな恐ろしい現実が来るなんて!
想像しただけでマッシロになる。
マッシロと言うより、マックロだ。
おじいちゃんは
果てしない暗黒の世界にいきなり落ち込んだのだ。
いや、それ以上だ。
想像もできない世界に落ち込んでしまったのだ。
何年も前から見えないのとはわけが違う。
しかも、80歳を過ぎてからの失明だ。
おじいちゃんに
かけてあげる言葉も見つからない。
なんて言って慰めていいのか
なんにも言えない。
おじいちゃんを見ているだけで
かわいそうで、かわいそうで涙があふれてくる。
おじいちゃん、おじいちゃん
これからは
私が、おじいちゃんの目になってあげるからね。
トイレも連れていってあげるし、
お風呂はお父さんが入れてくれるしね。
少しずつ、慣れていこうね。
取り乱しているおじいちゃんを前に
母は、泣きながら
おじいちゃんの手をとって、一生懸命に話しかけていた。
私もおじいちゃんの手をとって
みんながいるから大丈夫よって、ひとこと言ったのだった。
さっきまで見えていたものが見えなくなる!
こんな恐ろしい現実が来るなんて!
想像しただけでマッシロになる。
マッシロと言うより、マックロだ。
おじいちゃんは
果てしない暗黒の世界にいきなり落ち込んだのだ。
いや、それ以上だ。
想像もできない世界に落ち込んでしまったのだ。
何年も前から見えないのとはわけが違う。
しかも、80歳を過ぎてからの失明だ。
おじいちゃんに
かけてあげる言葉も見つからない。
なんて言って慰めていいのか
なんにも言えない。
おじいちゃんを見ているだけで
かわいそうで、かわいそうで涙があふれてくる。
おじいちゃん、おじいちゃん
これからは
私が、おじいちゃんの目になってあげるからね。
トイレも連れていってあげるし、
お風呂はお父さんが入れてくれるしね。
少しずつ、慣れていこうね。
取り乱しているおじいちゃんを前に
母は、泣きながら
おじいちゃんの手をとって、一生懸命に話しかけていた。
私もおじいちゃんの手をとって
みんながいるから大丈夫よって、ひとこと言ったのだった。
2010年05月12日
朝、起きたら
母の話・・・
なんだか、階下の祖父の部屋が朝早くから騒々しい。
もしかしたら
おじいちゃんはどこかへ行くのかな??
おじいちゃんは
とても早起きで、朝早いのはいつものことだし、と思っていたという。
でも、なんか
いつまでもうるさいので降りてみた。
そしたら
祖父の部屋は、衣服が散乱し、文机がひっくりかえり、湯のみが割れ、
布団や毛布や枕があっちこっちに!
母は、悟った。
おじいちゃんの、目が見えなくなった!
あわてて
お父さん、お父さん!!と
2階に向けて叫ぶような大きな声で父を呼んだ。
縁側の戸が開いていた。
縁側の縁がぬれていた。
もしかして
ここからおしっこをしたのかも・・・・
なんだか、階下の祖父の部屋が朝早くから騒々しい。
もしかしたら
おじいちゃんはどこかへ行くのかな??
おじいちゃんは
とても早起きで、朝早いのはいつものことだし、と思っていたという。
でも、なんか
いつまでもうるさいので降りてみた。
そしたら
祖父の部屋は、衣服が散乱し、文机がひっくりかえり、湯のみが割れ、
布団や毛布や枕があっちこっちに!
母は、悟った。
おじいちゃんの、目が見えなくなった!
あわてて
お父さん、お父さん!!と
2階に向けて叫ぶような大きな声で父を呼んだ。
縁側の戸が開いていた。
縁側の縁がぬれていた。
もしかして
ここからおしっこをしたのかも・・・・
2010年04月13日
おじいちゃんの失明
千恵さんが亡くなったその年の秋、
実家の祖父が緑内障で、とうとう目が見えなくなってしまった。
本人は
失明することを知っていたようだ。
が
どんなにショックだったことだろう。
どんなに恐怖と孤独を戦っていたことだろう。
その瞬間がいつやってくるのか・・
きっと、きっと
眠れぬ日が続いたに違いない。
目が見えなくなる、と覚悟をしていたとしても
実際には
なかなか現実を受け入れられないのでは・・・
でも
とうとう、そのときがやってきてしまった。
大パニックを起こしてしまったようだった。
実家の祖父が緑内障で、とうとう目が見えなくなってしまった。
本人は
失明することを知っていたようだ。
が
どんなにショックだったことだろう。
どんなに恐怖と孤独を戦っていたことだろう。
その瞬間がいつやってくるのか・・
きっと、きっと
眠れぬ日が続いたに違いない。
目が見えなくなる、と覚悟をしていたとしても
実際には
なかなか現実を受け入れられないのでは・・・
でも
とうとう、そのときがやってきてしまった。
大パニックを起こしてしまったようだった。
2010年03月28日
桜を楽しみにしていたのに
あんなに桜を楽しみに待っていた千恵さん。
桜が大好きだったという千恵さん。
お弁当つくってあげるから
お花見、一緒に行こうね!と、嬉しそうに言っていた千恵さん。
おばあちゃんより
先に天国へ行ってしまった千恵さん。
葬儀が終わった後
私は、お隣さんへ行って
それとなくおばあちゃんのことを聞いてみた。
お隣さんにいるのは
遠い親戚の人らしい。
千恵さんは
自分の病気が治らないことを知って、自分の死後のこと、おばあちゃんのこと、家の
ことなどを
この親戚の人に託したそうだ。
それだけでもまた涙が出てくる。
それにしてもおばあちゃん・・・
自分よりも先に、娘が逝ってしまったことが分からない。
かえって幸せだったのかも。
親よりも子どもが先に逝くことほど、不幸なことはないって、父が言っていたから。
また、桜の季節がめぐってきた。
千恵さんを想い、千恵さんの安らかさを祈って
今年も桜に、千恵さんを偲ぼう。
桜が大好きだったという千恵さん。
お弁当つくってあげるから
お花見、一緒に行こうね!と、嬉しそうに言っていた千恵さん。
おばあちゃんより
先に天国へ行ってしまった千恵さん。
葬儀が終わった後
私は、お隣さんへ行って
それとなくおばあちゃんのことを聞いてみた。
お隣さんにいるのは
遠い親戚の人らしい。
千恵さんは
自分の病気が治らないことを知って、自分の死後のこと、おばあちゃんのこと、家の
ことなどを
この親戚の人に託したそうだ。
それだけでもまた涙が出てくる。
それにしてもおばあちゃん・・・
自分よりも先に、娘が逝ってしまったことが分からない。
かえって幸せだったのかも。
親よりも子どもが先に逝くことほど、不幸なことはないって、父が言っていたから。
また、桜の季節がめぐってきた。
千恵さんを想い、千恵さんの安らかさを祈って
今年も桜に、千恵さんを偲ぼう。
2010年03月16日
千恵さんの顔
私は、家で力いっぱい泣いた後、
気を取り直して喪服に着替えた。
そして、数珠を持って知恵さんの家に行った。
千恵さんの家に入るのは初めてだった。
奥の座敷に千恵さんがいた、というより
千恵さんが、終の眠りについていた。
白い布をとると
まっしろい顔をした千恵さんの顔があった。
とっても痩せた顔で、最初に会ったころの千恵さんではなかった。
でも
色の白さはそのままのような気がした。
そして
ガンの激痛から逃れたであろう顔は、安堵の表情も感じられた。
千恵さん
長い間、たいへんでしたね。
自分のこと、お母さんのこと、そして病気のこと。
今度こそ、ゆっくり、安らかに眠ってくださいね。
優しく近所づきあいしてくれて、ありがとうございました。
私は
千恵さんの枕元で、涙をこらえながら
声も出せないままに、気持ちを伝えていた。
気を取り直して喪服に着替えた。
そして、数珠を持って知恵さんの家に行った。
千恵さんの家に入るのは初めてだった。
奥の座敷に千恵さんがいた、というより
千恵さんが、終の眠りについていた。
白い布をとると
まっしろい顔をした千恵さんの顔があった。
とっても痩せた顔で、最初に会ったころの千恵さんではなかった。
でも
色の白さはそのままのような気がした。
そして
ガンの激痛から逃れたであろう顔は、安堵の表情も感じられた。
千恵さん
長い間、たいへんでしたね。
自分のこと、お母さんのこと、そして病気のこと。
今度こそ、ゆっくり、安らかに眠ってくださいね。
優しく近所づきあいしてくれて、ありがとうございました。
私は
千恵さんの枕元で、涙をこらえながら
声も出せないままに、気持ちを伝えていた。
2010年03月07日
千恵さんが
「忌中」の札が貼ってあった千恵さんの家。
不安いっぱいで千恵さんの家に行ってみると
亡くなったのは
千恵さんだった!
玄関で出迎えてくれた人が
「一昨日、病院で息を引き取りました」
「どうして・・・」
私は、それ以外に言葉がなかった。
お悔やみも言えなかった。
ただ、あっけにとられていた・・・
元気になって帰るから・・
桜をみなくっちゃね・・・と
言っていたのに。
不意に涙がこぼれて、そのうち、わんわん泣きたくなって
私は、自分の家に駆け込んでしまった。
不安いっぱいで千恵さんの家に行ってみると
亡くなったのは
千恵さんだった!
玄関で出迎えてくれた人が
「一昨日、病院で息を引き取りました」
「どうして・・・」
私は、それ以外に言葉がなかった。
お悔やみも言えなかった。
ただ、あっけにとられていた・・・
元気になって帰るから・・
桜をみなくっちゃね・・・と
言っていたのに。
不意に涙がこぼれて、そのうち、わんわん泣きたくなって
私は、自分の家に駆け込んでしまった。
2010年02月24日
帰ってきたのは・・・
千恵さんは、病院からなかなか帰って来なかった。
どうしたのかしらん?
病後が良くないのかなあ・・・
お見舞いに行ってから1ヶ月以上は経っていた。
もう一度行ってみようかなと思っていた矢先、
なんだかお隣が騒々しい。
しょっちゅう、車が出入りしているようだし、と思って外へ出てみると
千恵さんの家の玄関に「忌中」の札が貼られていた。
おばあちゃんが亡くなった?
それとも、それとも????
私の胸はバクバク、ドキドキでいっぱい!
どうしたのかしらん?
病後が良くないのかなあ・・・
お見舞いに行ってから1ヶ月以上は経っていた。
もう一度行ってみようかなと思っていた矢先、
なんだかお隣が騒々しい。
しょっちゅう、車が出入りしているようだし、と思って外へ出てみると
千恵さんの家の玄関に「忌中」の札が貼られていた。
おばあちゃんが亡くなった?
それとも、それとも????
私の胸はバクバク、ドキドキでいっぱい!
2010年02月14日
恵さんの再入院
なんということか、退院してしばらく経ち
千恵さんは、また入院することになった。
なんだか嫌な予感・・・
口には出さなかったけれど、ガンの転移?
千恵さんは気丈に
再検査があるみたいで・・・と言っていたが。
しばらくして、私はまたお見舞いに行った。
千恵さんは
もう帰れないかもしれない・・・そんな気がする。
そんなこと言わないで
治って帰る!という気持ちを強くもって。
ありがとう・・
千恵さんは涙ぐんでいた。
病状を詳しくは語ろうとはしなかった千恵さん。
私もそれ以上のことは聞かなかった。
千恵さんは、とっても孤独だったのかもしれない。
そして
不安と寂しさに打ち震えていたのかもしれない。
千恵さんは、また入院することになった。
なんだか嫌な予感・・・
口には出さなかったけれど、ガンの転移?
千恵さんは気丈に
再検査があるみたいで・・・と言っていたが。
しばらくして、私はまたお見舞いに行った。
千恵さんは
もう帰れないかもしれない・・・そんな気がする。
そんなこと言わないで
治って帰る!という気持ちを強くもって。
ありがとう・・
千恵さんは涙ぐんでいた。
病状を詳しくは語ろうとはしなかった千恵さん。
私もそれ以上のことは聞かなかった。
千恵さんは、とっても孤独だったのかもしれない。
そして
不安と寂しさに打ち震えていたのかもしれない。
2010年02月08日
千恵さんが帰ってきた
1ヶ月近くたって
千恵さんはようやく自分の家に戻ってきたけれど・・・
千恵さんは
さらに痩せて、なんだか痛々しい感じになっていた。
大丈夫?
大丈夫よ、
おかげで念願のスリムボディになったわ〜
これからいっぱい食べて
また、デブになるからね、と明るく笑っていた。
そっか、
それならいいけど。
おばあちゃんは、とても元気な様子だったという。
私よりも、ずっと元気よ。
娘の顔はわからないけど
ストレスがもう全然ないから、うんと長生きするかもしれないわ。
千恵さんはようやく自分の家に戻ってきたけれど・・・
千恵さんは
さらに痩せて、なんだか痛々しい感じになっていた。
大丈夫?
大丈夫よ、
おかげで念願のスリムボディになったわ〜
これからいっぱい食べて
また、デブになるからね、と明るく笑っていた。
そっか、
それならいいけど。
おばあちゃんは、とても元気な様子だったという。
私よりも、ずっと元気よ。
娘の顔はわからないけど
ストレスがもう全然ないから、うんと長生きするかもしれないわ。
2010年02月06日
千恵さん
千恵さんが入院し、おばあちゃんはホームへ行ってしまった。
お隣さんは、もう誰もいない。
千恵さんが手術をして数日たったころを見計らって、お見舞いに行った。
ビックリ!
すごい痩せてる!
以前の千恵さんは
少し太めだが、そのふっくらとしたところが優しそうで、カワイイ感じの人だった。
それが、
ゲッソリ!と痩せてしまい、シワも目立ち、
いっぺんに10歳くらい歳をとってしまったかのようだった。
手術は成功したようだった。
ガン腫瘍を取ってもらったから、大丈夫よ。と、千恵さん。
良かったわね。
今は
おばあちゃんより、自分の療養を優先してね、と私は言った。
ありがとう。そうするわ。
おばあちゃんは、どうしているかしらね?
手術をする前に会いに行ってきたけど、
もう、私の顔は全然わからなくなっている・・・と千恵さんは
寂しそうに言った。
あと、2週間ほどしたら帰れると思うので
またよろしくね。
じゃ、お大事に・・と
言って私たちは別れた。
お隣さんは、もう誰もいない。
千恵さんが手術をして数日たったころを見計らって、お見舞いに行った。
ビックリ!
すごい痩せてる!
以前の千恵さんは
少し太めだが、そのふっくらとしたところが優しそうで、カワイイ感じの人だった。
それが、
ゲッソリ!と痩せてしまい、シワも目立ち、
いっぺんに10歳くらい歳をとってしまったかのようだった。
手術は成功したようだった。
ガン腫瘍を取ってもらったから、大丈夫よ。と、千恵さん。
良かったわね。
今は
おばあちゃんより、自分の療養を優先してね、と私は言った。
ありがとう。そうするわ。
おばあちゃんは、どうしているかしらね?
手術をする前に会いに行ってきたけど、
もう、私の顔は全然わからなくなっている・・・と千恵さんは
寂しそうに言った。
あと、2週間ほどしたら帰れると思うので
またよろしくね。
じゃ、お大事に・・と
言って私たちは別れた。
2010年02月02日
千恵さんが!
しばらく千恵さんを見かけなかった。
そう言えば、最近、おばあちゃんも見てないなあ・・・
ある日、千恵さんが私の家にやってきた。
私、入院することになったの
エッ、おばあちゃんじゃなくて?
入院するのは私なの。
私ね、「胃がん」になっていたの・・・
ちゃんと検査をしたの?
健康診断で要検だったので病院で精密検査をしたら、胃がんだったのよ。
エッ!!
私は、あまりにビックリして次の言葉がでないくらい。
で、おばあちゃんは?
こんな状況だから、いろんな人に頼み込んで
なんとかホームに入れることになって・・・
とりあえずは仮入所だけど、そこへ行っているの。
そう言えば、最近、おばあちゃんも見てないなあ・・・
ある日、千恵さんが私の家にやってきた。
私、入院することになったの
エッ、おばあちゃんじゃなくて?
入院するのは私なの。
私ね、「胃がん」になっていたの・・・
ちゃんと検査をしたの?
健康診断で要検だったので病院で精密検査をしたら、胃がんだったのよ。
エッ!!
私は、あまりにビックリして次の言葉がでないくらい。
で、おばあちゃんは?
こんな状況だから、いろんな人に頼み込んで
なんとかホームに入れることになって・・・
とりあえずは仮入所だけど、そこへ行っているの。
2010年01月29日
どなたさん?
「あんた、どなたさん?」
ある日、
千恵さんは、おばあちゃんにこう言われた。
千恵さんは、またまた大ショックを受けてしまった。
もう、娘の顔もわからないのよ・・・
どうしたらいい??
どうすればいいんだろ・・・
おばあちゃんは
「どなたさん?」と言う日もあれば、また、少し時間が経つと
記憶が戻ってくる日もあるそうだが、千恵さんは、このひと言にすごいショックで
しばらく凹んでしまっていた。
こんな風に肉親への記憶がなくなると、あとはいったい何が残っているのだろう。
おばあちゃんの心にあるのは、
やっぱり「ぬまづ」なのだろうか。
ある日、
千恵さんは、おばあちゃんにこう言われた。
千恵さんは、またまた大ショックを受けてしまった。
もう、娘の顔もわからないのよ・・・
どうしたらいい??
どうすればいいんだろ・・・
おばあちゃんは
「どなたさん?」と言う日もあれば、また、少し時間が経つと
記憶が戻ってくる日もあるそうだが、千恵さんは、このひと言にすごいショックで
しばらく凹んでしまっていた。
こんな風に肉親への記憶がなくなると、あとはいったい何が残っているのだろう。
おばあちゃんの心にあるのは、
やっぱり「ぬまづ」なのだろうか。
2010年01月25日
沼津へ帰りたいおばあちゃん・・
おばあちゃんは
認知症が進んでいるとはいえ、身体はなんの異常もなく、むしろ健康とのことだっ
た。
健康だから
歩けるし
食べられるし
排泄もする
寝たきりなら、徘徊する心配はないが
おばあちゃんの場合は、少し目を離すとすぐに外に出て行こうとする。
聞いたところによると
おばあちゃんは
「ぬまづ、ぬまづ」と言って
玄関に行くのだそうだ。
おばあちゃんの生まれ育ったのは静岡県沼津市。
どうも、そこへ帰りたがっている・・・と千恵さんは言っていた。
そっか〜
人間って、生まれ育ったところに
愛着と記憶があるのか・・・
小さいときに育ったところに帰りたくて仕方がないおばあちゃん。
認知症になると
子どもに帰るのね、きっと。
認知症が進んでいるとはいえ、身体はなんの異常もなく、むしろ健康とのことだっ
た。
健康だから
歩けるし
食べられるし
排泄もする
寝たきりなら、徘徊する心配はないが
おばあちゃんの場合は、少し目を離すとすぐに外に出て行こうとする。
聞いたところによると
おばあちゃんは
「ぬまづ、ぬまづ」と言って
玄関に行くのだそうだ。
おばあちゃんの生まれ育ったのは静岡県沼津市。
どうも、そこへ帰りたがっている・・・と千恵さんは言っていた。
そっか〜
人間って、生まれ育ったところに
愛着と記憶があるのか・・・
小さいときに育ったところに帰りたくて仕方がないおばあちゃん。
認知症になると
子どもに帰るのね、きっと。
2010年01月21日
千恵さんに、どんどん負担が・・・
それでも
千恵さんは、デイサービスも利用しながら
おばあちゃんを介護していた。
認知症の人の症状はいろいろあると聞いた。
一人ひとりが決して同じではない。
中には
家人に暴力を振るう人もいるらしい。
特に、オムツ交換時に、足で蹴られたなどと言うことも聞く。
朝、起きたら冷蔵庫がカラッポになっていた!という話も耳にする。
おばあちゃんの場合は、女性だし、小柄であることもあって、暴力はなかったようだが。
でも
おばあちゃんは、認知症が進んだことで
昼夜かまわず、起きたり寝たり、大きな声を出したりして
千恵さんの睡眠を妨害し出した。
千恵さんは
なんだか、ゲッソリした感じで、疲れがたまっているようだった。
千恵さんは、デイサービスも利用しながら
おばあちゃんを介護していた。
認知症の人の症状はいろいろあると聞いた。
一人ひとりが決して同じではない。
中には
家人に暴力を振るう人もいるらしい。
特に、オムツ交換時に、足で蹴られたなどと言うことも聞く。
朝、起きたら冷蔵庫がカラッポになっていた!という話も耳にする。
おばあちゃんの場合は、女性だし、小柄であることもあって、暴力はなかったようだが。
でも
おばあちゃんは、認知症が進んだことで
昼夜かまわず、起きたり寝たり、大きな声を出したりして
千恵さんの睡眠を妨害し出した。
千恵さんは
なんだか、ゲッソリした感じで、疲れがたまっているようだった。
2010年01月19日
認知症が、どんどん
ある日、仕事の帰り、久々に千恵さんの姿を見つけたので
おばあちゃん、どう?
と、聞いてみた。
そしたら
千恵さんは、みるみる涙をこぼしはじめた。
アッ、なんか悪いこと言ったかなあ・・・
千恵さんが外から帰ったら、やけに寝室が臭く、押入れを開けたら
大便をしたオムツをそこに隠してあったのだという・・・
私も衝撃!だった。
千恵さんも、どんなにかショックだったことだろう。
こんな風になるのか・・・
でも、誰が悪いわけでもない。
でも、私の母がこんな風になるなんて、考えたこともなかった・・・
千恵さんは
しぼりだすように、泣いていた。
ウンチやおしっこって、
たとえ認知症になっても、見られるのは恥ずかしい行為だと思っているのだろう。
認知症になっても、恥ずかしいことは恥ずかしい、と言う感情があるのだ。
千恵さんも
そのことはわかっているの、分かっているから余計に悲しい。
私は
千恵さんにかけてあげる言葉がなかった。
現実に介護をしたわけでもない。
介護をしたことがない私に、千恵さんの気持ちを受け止めあげる度量がない・・・
おばあちゃん、どう?
と、聞いてみた。
そしたら
千恵さんは、みるみる涙をこぼしはじめた。
アッ、なんか悪いこと言ったかなあ・・・
千恵さんが外から帰ったら、やけに寝室が臭く、押入れを開けたら
大便をしたオムツをそこに隠してあったのだという・・・
私も衝撃!だった。
千恵さんも、どんなにかショックだったことだろう。
こんな風になるのか・・・
でも、誰が悪いわけでもない。
でも、私の母がこんな風になるなんて、考えたこともなかった・・・
千恵さんは
しぼりだすように、泣いていた。
ウンチやおしっこって、
たとえ認知症になっても、見られるのは恥ずかしい行為だと思っているのだろう。
認知症になっても、恥ずかしいことは恥ずかしい、と言う感情があるのだ。
千恵さんも
そのことはわかっているの、分かっているから余計に悲しい。
私は
千恵さんにかけてあげる言葉がなかった。
現実に介護をしたわけでもない。
介護をしたことがない私に、千恵さんの気持ちを受け止めあげる度量がない・・・
2010年01月17日
車を降りるのは・・・
千恵さんは、
おばあちゃんを外に連れ出すことで、リフレッシュをはかっていた。
もちろん、自分のリフレッシュも兼ねて、ね。
おばあちゃんは
車に乗るときは、どうして乗っていいのか、わからないのに、
車を降りるときはロックしてあっても、ロックを外して出てしまうらしい。
不思議!
なせだろう。
人間って、狭い空間にいると、閉じ込められていると思って、必死に出ようとするのだろうか?
だから、家の鍵を変えても、出ていくのだろうか。
そして、そのうち
おばあちゃんは、失禁するようになっていた。
おばあちゃんを外に連れ出すことで、リフレッシュをはかっていた。
もちろん、自分のリフレッシュも兼ねて、ね。
おばあちゃんは
車に乗るときは、どうして乗っていいのか、わからないのに、
車を降りるときはロックしてあっても、ロックを外して出てしまうらしい。
不思議!
なせだろう。
人間って、狭い空間にいると、閉じ込められていると思って、必死に出ようとするのだろうか?
だから、家の鍵を変えても、出ていくのだろうか。
そして、そのうち
おばあちゃんは、失禁するようになっていた。
2010年01月15日
鍵を外して
隣のおばあちゃんは、一進一退が続いていたようだ。
薬が効いていたのかもしれない。
おばあちゃんを連れて、外にお出かけする千恵さんをたまに見かけた。
なんか、おばあちゃんは嬉しそうだった。
いつも千恵さんの帰りが遅いので、おばあちゃんは寂しかったのかもしれない。
千恵さんも仕事には未練があったようだが、いい意味で開きなおったみたい。
私もまずは、良かったなあ、と思っていた。
ある日、またおばあちゃんがいなくなった。
千恵さんは、前回のおばあちゃん失踪事件にこりて、おばあちゃんの衣服に名前と電話番号を書いた名札をはりつけてあった。
そしたら
それが利いたのか、おばあちゃんを見た人が、電話をかけてくれたそうだ。
玄関の鍵を内側からかけてあるのに、それを外して、外へ出ていくらしいのだ。
で、千恵さんは
玄関の鍵を変えた。
でも、人間って、賢いのだろう。
おばあちゃんは、変えた鍵も外して出ていくというのだから・・・
薬が効いていたのかもしれない。
おばあちゃんを連れて、外にお出かけする千恵さんをたまに見かけた。
なんか、おばあちゃんは嬉しそうだった。
いつも千恵さんの帰りが遅いので、おばあちゃんは寂しかったのかもしれない。
千恵さんも仕事には未練があったようだが、いい意味で開きなおったみたい。
私もまずは、良かったなあ、と思っていた。
ある日、またおばあちゃんがいなくなった。
千恵さんは、前回のおばあちゃん失踪事件にこりて、おばあちゃんの衣服に名前と電話番号を書いた名札をはりつけてあった。
そしたら
それが利いたのか、おばあちゃんを見た人が、電話をかけてくれたそうだ。
玄関の鍵を内側からかけてあるのに、それを外して、外へ出ていくらしいのだ。
で、千恵さんは
玄関の鍵を変えた。
でも、人間って、賢いのだろう。
おばあちゃんは、変えた鍵も外して出ていくというのだから・・・
2010年01月14日
千恵さんの決心
千恵さんは、一大決心をして、おでん屋を辞めた。
きっと、苦渋の決断をしたのだろう。
千恵さんは、まだまだ働ける50代のはじめだった。
どこか、施設に入れることも考えたけど、入れそうな施設はいっぱい・・・
いつ入れるか分からないの。
経済的なこともあるしね・・・
女手ひとつで私を育ててくれた母を看てあげたいし・・・
これ以上、母を一人で放っておけないもの・・・
千恵さんは一人で
どんなにに不安だったことだろう。
それと、この先
認知症がすすんでどういう状態になるのか、千恵さんは想像もつかなかったのだ。
施設に入れなくても
今は、デイサービスもあるようだから、いろいろ調べてみるといいかも・・・
私がそう言うと
ありがとう、こんな話を聞いてくれるだけでも嬉しい・・・
千恵さんは寂しそうに笑った。
きっと、苦渋の決断をしたのだろう。
千恵さんは、まだまだ働ける50代のはじめだった。
どこか、施設に入れることも考えたけど、入れそうな施設はいっぱい・・・
いつ入れるか分からないの。
経済的なこともあるしね・・・
女手ひとつで私を育ててくれた母を看てあげたいし・・・
これ以上、母を一人で放っておけないもの・・・
千恵さんは一人で
どんなにに不安だったことだろう。
それと、この先
認知症がすすんでどういう状態になるのか、千恵さんは想像もつかなかったのだ。
施設に入れなくても
今は、デイサービスもあるようだから、いろいろ調べてみるといいかも・・・
私がそう言うと
ありがとう、こんな話を聞いてくれるだけでも嬉しい・・・
千恵さんは寂しそうに笑った。